エニアグラム・生得本能(本能のサブタイプ)サブタイプ別の詳細な特徴、海外書籍情報の翻訳・まとめ
タイプ8:セクシャル(SX8)の詳細
生得本能・セクシャルにおけるタイプ8の「欲望」
SX8は、「自分にはパートナーに対する特別な権利がある」と感じる性格を持っています。これは、タイプ8の「欲望(Lust)」と、生得本能セクシャル(SX)が結びつくことで生まれます。SX8は、支配的だったり、反抗的だったり、注目を集めたがる態度をとることがよくあります。しかし、これらの行動は、自分が愛されたい、または他者から望まれたいという不安を覆い隠そうとする試みに過ぎません。このサブタイプの人々は、人間関係を「征服」として捉え、そうした関係において自らが権力を握ることを望みます。SX8には特有の二面性が見られます。一方の面では、環境全体を支配しようとします。SX8は、人や物事に対する権力を握ることで、自分の力を感じたいと強く思っています。もう一方の面では、価値があると認めた相手に「降伏」しようとします。この場合でも、表向きは情熱的に相手に従っているように見えますが、実際にはその関係の主導権を手放したくないという強い欲求を内に秘めています。
オスカー・イチャーソは、このSX8を「所有欲、独占欲(Possessiveness)」と呼びました。SX8は、パートナーを自分の所有物のように扱う傾向があるからです。このような独占的な要求は、相手には「過剰な愛情の要求」と感じられるかもしれません。一方で、クラウディオ・ナランホは、SX8が相手を「魅了したり、脅したり」することで支配しようとする性質があると述べています。
クラウディオ・ナランホによるSO8の特徴
SO8: 抑圧された人々との反社会的連帯
SX8は、欲望を体現した性格の持ち主であり、タイプ8の中でもSX8は特にその特徴が際立っています。この性格は、ヘンリー・フィールディングの古典小説「捨て子トム・ジョウンズの物語」にも描かれています。物語の冒頭では、主人公が親切なイギリス貴族オールワージー氏のベッドに突然現れた赤ん坊として登場します。この赤ん坊は捨て子でしたが、オールワージー氏によって庶子として受け入れられ、幼少期には愛情深く世話をされながら育てられます。
年月が経つにつれ、トム・ジョウンズは女性たちを強く惹きつける、非常に魅力的な青年へと成長しました。彼は、当時の貴族社会における厳格な道徳規範を逸脱し、女性に対して自由で奔放な振る舞いを見せる人物として注目されるようになります。しかし、森番の娘との関係や、育ての親であるオールワージー氏の姉の息子で幼馴染でもあるブリフィルの裏切りが原因で、トムはついに屋敷を追放されることになります。
その後、トムの評判はさらに悪化していきます。例えば、レディ・ベラストンとの関係や、決闘騒ぎが原因で牢獄へ入れられる事件など、次々と波乱を巻き起こします。また、トムの欲望に基づく行動は、彼の浮気によって傷つけられた女性たちの嫉妬や怒りを招き、その非難はさらに複雑化していきます。そして最終的に、トムは絞首刑による死刑判決を受けるに至るのです。
文学においてSX8の特性を最も象徴するキャラクターの一人は、ドストエフスキーの「カラマーゾフの兄弟」に登場する長兄ドミートリイです。彼は、激しい「ディオニュソス的[1]」な性質を持ち、その情熱的で衝動的な性格によって周囲の人々から非難を受けます。しかし、彼の物語を読む多くの人は、彼の人間らしさに共感を覚え、心を動かされます。しかし、ドミートリイの評判は次第に悪化し、彼への疑いも深まっていきます。そして、父親が殺害されると、彼は無実であるにもかかわらず犯人扱いされてしまいます。最終的に、ドミートリイは不当な裁判で有罪とされ、シベリアの刑務所に送られるという悲劇的な結末を迎えます。
ドミートリイの暴力的で所有欲が強く支配的な性格と、彼が持つ高貴な人間性の両面は、「カラマーゾフの兄弟」の中で特に重要なエピソードに表れています。それは、彼が連隊で任務についているときに起きた出来事です。このエピソードでは、ドミートリイの粗暴さと、彼が持つ人間的な優しさが並行して、対比的に描かれています。
SX8の特徴は、単なる刺激や感情の強さを求めることではなく、復讐心に裏打ちされた支配への強い意志と、他者を従わせ、屈辱を与えるためにその人を巧妙に操る能力にあります。
ドミートリイという人物について、小説の結末が教えてくれる最も重要なことは、彼が無実でありながらシベリアへの不当な追放刑という重い罰を受けたにもかかわらず、彼はその罰を贖罪の機会として受け入れることにある点です。この贖罪は、世間の評価を気にしているわけではなく、むしろ、自分の中にある欲望や復讐心がどれほど恐ろしいものなのかをドミートリイ自身が深く理解した上での行動です。「罪と罰」のラスコーリニコフと「カラマーゾフの兄弟」のドミートリイは、性格が全く違いますが、どちらも最後は同じように結末を迎えます。二人は、与えられた判決が、浄化と新しい人生への第一歩だと理解して受け入れたのです。
ドストエフスキーの「白痴」に登場するロゴージンも、SX8の性格を持っていますが、ロゴージンはドミートリイよりももっと攻撃的で、犯罪的な行動をとります。
ロゴージンは社会的慣習に一切従わず、関心を持ちません。まるで闘牛場から出てきた雄牛のように、自分の思い通りに物事を進めようとします。
ロゴージンと、ムイシュキン公爵(主人公でありタイトルの「白痴」の人物。誠実な善人)が列車の中で初めて出会います。このとき、ロゴージンはすでに無礼で、あけすけで、礼儀を欠き、攻撃的な態度を見せています。ロゴージンは自分には学がないことを話し、それをまるで誇らしげに感じているかのような態度をとります。さらに、ナスターシャについて自分の気に入らない話を聞くと、すぐに怒りをあらわにします。
ロゴージンは初めてナスターシャを見たとき、「自分の中で何かが燃え上がった」と言いました。彼女と最初に目が合った翌日、父親から1万ルーブルを渡されると、何も考えずにそのお金でダイヤのイヤリングを買い、ナスターシャに贈ろうと決めました。ロゴージンは恥ずかしさから自己紹介せずにナスターシャの家を出ますが、家に帰ると父親に殴られるか、それ以上のひどいことが起きるとわかっていても、ロゴージンはこう言います。「家に帰る途中で水に飛び込もうかと思ったが、『どうでもいい』と思って、囚人のようにそのまま家に帰った」。彼はただ衝動で行動し、ナスターシャを魅了したいという一心で動いていたのです。彼の行動を阻むものは何もなく、結果について考えるのはいつも後回しです。そして、その結果がどうであろうと、彼にとっては取るに足らないものです。
ロゴージンと公爵が次に会うのは、非常に異常な状況下です。ロゴージンは、ナスターシャがガーニャの家にいることを知り、そこでナスターシャとガーニャの間で、結婚が決まりつつあると思い込んで、怒りと威圧的な態度で現れます。ロゴージンはガーニャに向かって「俺はナスターシャを買うと言ったし、今から本当に買うつもりだ」と言い、数千ルーブルを提示します。ロゴージンはナスターシャを手に入れるためなら、誰とでも戦う覚悟を持っていますが、彼女がそのことを望んでいるかどうかは全く考えていません。彼はただナスターシャを自分のものにしたいだけで、そのためには何も妨げるものはないと思っています。この前代未聞のシーンでは、ロゴージンは他人の家で、多くの人々が見守る中、ナスターシャのために金額をどんどん引き上げ、最終的には10万ルーブルに達します。怒りに目がくらんだロゴージンは、自分の目的を達成するために嘘をつき続けます [2]。
その会話の中でロゴージンはこう言います。「お前は彼女を哀れみで愛していると言うが、俺は彼女を哀れんでなんかいない。むしろ、彼女を憎んでいる」。ロゴージンは、ナスターシャが何度も他の男たちと共に自分に反抗してきたこと、それが自分に大きな金銭的な損失を与えたことを話します。それでも彼は、結婚するという考えを変えません。ナスターシャは彼を嘲笑い、挑発し続けます。ある時、ナスターシャは言います。「今、私はあなたを召使いとしてさえ愛せないし、夫として愛すなんて、もっとありえない」。ロゴージンは怒りに任せて彼女を殴り、その後すぐに彼女の部屋で1日半も許しを請いました。「お前がいないと俺は生きていけない」。ナスターシャはいつも彼を狂わせます。「みんな俺があんたを殺すって言うけどな、俺は今から寝室へ帰る。部屋のドアは閉めないから、俺が何を恐れているか見せてやる!」ロゴージンはナスターシャに、自分が2日間眠らず、食べ物も取らずに彼女の許しを待っていたことを告白します。そして内心では復讐を誓っています。ナスターシャはこう答えます。「きっと、私があなたと結婚したとき、これまでのことを思い出させるために復讐するって誓ったんでしょうね」。ロゴージンは、支配する者同士の駆け引きを続けているのです。ロゴージンは謝罪を使って彼女を誘惑し、彼女が「自分のもの」になった瞬間、権力と支配、そして復讐をもって彼女を扱おうと企んでいるのです [3]。
公爵はロゴージンに言います。「お前の愛は憎しみと区別がつかない。そしてそれが消えたら、もっとひどいことになるだろう。この愛のせいで苦しんだ分、彼女をひどく憎むことになる」。一連の会話の中で、ロゴージンは自分の母親がナスターシャと会ったこと、そしてそれで一時的に全てが丸く収まったことを明かします。公爵は「それは良かった。たぶん神がお前の問題を解決してくれるだろう」と返しました。それに対してロゴージンは衝動的に言い放ちます。「そんなことは絶対にない!」
別の時には、公爵はロゴージンにこう言います。「お前は疑り深くて嫉妬深い。それで、悪いことを観察するときに誇張してしまうんだ。明らかに、ナスターシャはお前が言うほどお前を悪くは思っていない。もしお前のことが嫌いだったら、ナスターシャは結婚するより先に、自ら水に飛び込むか、ナイフを手に取るかしていただろう」。ロゴージンはこう答えます。「ナスターシャが俺と結婚するのは、ナイフが彼女を待っているからだ!」彼はナスターシャにナイフを突き立てる覚悟はできていますが、それをいつでも行うわけではありません。彼女が自分に身を委ねる瞬間を待ち、その瞬間に復讐を成し遂げようとしているのです。
ロゴージンは活力に満ちた男であり、最終的な結論について一切気にすることなく、今この瞬間だけに生きていました。未来のことや、他のことは全く気にせず、ただ自分が夢中になっていることだけを考えていました。
タイプ8 セクシャル ─ 所有欲
SX8は、社会から一定の距離を置く傾向があります。他のタイプ8よりも、反抗的で挑発的な性格を持っています。自分の価値観が一般的な社会の規範と違うことを、堂々と示し、宣言します。この特徴は全てのタイプ8に共通していますが、セクシャル・サブタイプでは、この特徴が「知性からの明確な切り離し」として顕著に現れます。
このサブタイプを表す言葉は「所有欲」です。最初、筆者はこれを、物理的な物に対する所有欲だと思っていましたが、実際にはこの衝動が他者を「支配する」ことに限定されていることに気付きました。SX8は、人間関係において非常に強い所有欲・独占欲を持っています。また、この「所有欲・独占欲」は、場の中心になりたいという欲望とも関係しています。SX8は常に自分が中心でありたいと思っています。彼らは常に他者を魅了し続けます。その力は、他のタイプ8とは異なり、より強い誘惑力や魅力から生まれます。これが、他のタイプ8と比べてSX8のスタイルを際立たせます。他のサブタイプには、SX8のように多様な魅力はありません。SX8は感情的な面が強く、SP8は純粋な行動タイプ、SO8は唯一の知的なタイプ8です。
サンドラ・マイトリ
Maitri, S. (2001). "The Spiritual Dimension of the Enneagram"
タイプ8セクシャル ─ 所有・降伏
性別に関係なく、SX8はパートナーを所有し支配しようとします。SX8は表面的には支配的に見えることがありますが、実はそれは「愛されたい」「求められたい」という不安を隠すための方法です。男性も女性も、SX8は人間関係を「征服するか、されるか」として捉え、弱さや依存を避けるために、関係内で力を握ろうとします。女性のSX8は、自分が価値を見出したパートナーに対して、支配権を委ねたいと願い、情熱的に降伏する姿勢を見せつつも、実際にはしっかりとコントロールを保っています。この「欲望」と呼ばれる情熱は、SX8が愛する人の体と心を完全に自分のものにしたいという強い欲求として表れます。
ベアトリス・チェスナット
タイプ8(セクシャル)の説明(2021)
Chestnut, B. (2021). "The Enneagram Guide to Waking Up"
このサブタイプは最も挑発的で反抗的です。 彼らはルールに反対して声を上げ、周りの人々を引きつける魅力やカリスマ性があります。他のタイプ8に比べて感情的で、周囲の人々を自分の所有物にしようとする傾向が強いです。SX8は情熱的で行動的ですが、思考はあまり重視しません。場の中心でエネルギッシュに支配し、コントロールしたり注目を集めたりすることを好みます。
もしこれがあなたのサブタイプであれば、 エニアグラムの27のサブタイプの中で最も強い「権力欲」を持つ可能性があります。あなたは全ての物事や人々を自分の力で支配したいと考えています。人々やその注目を自分のものにしたいという欲求が、常に自分が物事の中心にいなければならないという思いに繋がります。あなたは人々をコントロールしたいと望み、自分の支配に従わせようとします。タイプ8のサブタイプの中で最も感情的なあなたは、衝動や情熱に基づいて行動することが多いですが、しばしば自分の行動を深く考えずに進めてしまいます。
タイプ8(セクシャル)の説明(2021)
Chestnut, B. (2021). "The Complete Enneagram"
SX8は、反抗的な態度と、周りの注目を集めたいという欲求を通して、自らの欲望を表現します。SX8は、非常に強烈でカリスマ性のある人物で、支配力や影響力を持ちたいと強く願います。物質的な安定よりも、物や人々を支配したいと考えています。「所有欲」という言葉は、場の全体を精力的に支配し、環境を自分の思い通りにしたいという欲求を表しています。
タイプ8(セクシャル)の説明(2021)
Chestnut, B. (2021). "The Complete Enneagram"
SX8は、強い反社会的傾向を持っています。このサブタイプの人々は、挑発的な性格で、反抗的な態度を通じて欲望を表現します。つまり、言葉と行動で自分の価値観が一般的な基準と異なることをはっきりと示します。SX8は、タイプ8のサブタイプの中で最も反抗的であり、また興味深いことに、最も感情的なタイプでもあります。
この反抗的なタイプ8は、自分が「悪者」として見られることに抵抗を感じません。むしろ、それを気にせず、反抗的な行動に罪悪感を抱くことはほとんどありません。SX8にとって、社会の慣習に逆らったり、規則や法律を無視することは、むしろ誇りを感じることです。
子供のころ、SX8の多くは、片方の親または両方の親から愛情を十分にもらえなかったり、尊重されない経験をしたため、(意識的にも無意識的にも)母親や父親の権威を認めないことを決意しました。この最初の権威への反抗が、彼らの強い反抗的傾向の土台となったのです。
SX8に与えられた名前は「所有欲」であり、これは環境全体を支配する(または征服する)ようなカリスマ的な影響力、つまり人々の注意を精力的に引き寄せることを指します。SX8は、シーン全体を精力的に支配し、物事の中心になることで「所有欲」を体現します。彼らは、人々の注目を集めることで自分の力を感じるのが好きです。「自分が現れることで、世界が動き始める」と考えています。
SX8は、他者を支配し、力を持ちたいという欲求を表現します。物事や人々をコントロールし、自分の言葉で周囲に影響を与えようとします。人や物、状況など、すべてのものを「所有すべき対象」と見なします。SX8は、物質的な安全を求めるのではなく、人々や物事、状況を支配し、自分の思い通りにする力を追い求めます。
この力を持ち続けるために、SX8は魅力的でカリスマ的な存在になります。その力は、誘惑的で強烈な魅力を通じて発揮されます。SX8は、SP8やSO8とは異なるスタイルを持っています。ナランホの説明によれば、SX8は「より多彩な羽根(より多様な魅力)」を持ち、より魅力的で、率直に物事を言う傾向があります。彼らは非常に強い誘惑の力を持っています。
SX8は、愛やセックス、そして人生における過度の楽しみを貪欲に求めます。彼らは冒険、リスク、挑戦、そしてアドレナリンが駆け巡るような刺激的な体験を追い求めます。情熱的で行動的な傾向が強いため、SX8は弱弱しい人や依存的な人、またはのろまな人には特に厳しく接することがあります。
タイプ8の中でも最も感情的なサブタイプであるSX8は、大きな情熱を持っています。その情熱は時に、他のタイプ8には見られないような驚くべき感情として表れます。非常に情熱的で感情的なSX8は、思考よりも行動や情熱を重視する傾向があります。非常に頭がいいことは多いものの、内省や思索よりも、行動と情熱に重きを置いて行動します。
彼らは物事を深く感じ取ります。この能力は良い関係には役立ちますが、関係がうまくいかない場合には問題になることもあります。ロマンチックな関係では、SX8はパートナーが自分に過度に依存するように仕向けたり、自分がパートナーの生活の中心になろうとすることがあります。SX8は忠誠を求めますが、SX8自身が忠実であるとは限りません(イギリスのヘンリー8世がその例となるでしょう)。また、恋人だけでなく、友人や物、場所、さらには状況に対しても所有的な関係を持つ傾向があります。
このサブタイプは通常、タイプ8として簡単に認識され、他のタイプと混同されることはほとんどありません。SX8はSX4(タイプ4・セクシャル)と似ていることもあります。確かに両者は怒りっぽく、感情的で、要求が多いという点では共通しています。しかし、SX8は自信に満ちている(または過剰に自信に満ちている)ため、SX4が抱える内面的な不足感とは異なり、自己への強い信念を持っています。
ハイキ
The Haiki Enneagram Website
SX8:所有欲
SX8は、最も強烈で反抗的なタイプ8です。ここで言う反抗とは、タイプ2的な意味での反抗ではなく、「これは自分のものだ」と感じるものを確実に手に入れるための反抗です。それは情熱と行動を伴った、対決的な反抗です。言い換えれば、社会から完全に孤立しているとも言えます。
彼らは挑発的であり、常識から外れていて、自分の欲望を満たすためには何でもします。そして、自分のこの傾向を誇りに思っています。この瞬間において、彼らは本能的な反応を、感情の本物らしさと混同することがあります。ただし、彼らが本当の感情を感じていないわけではありません。むしろSX8は感情を全力で感じていますが、その感情を他者を「所有する」という形で表現しようとするのです。
彼らは周囲の人々を試し、少しでも自分と「最後まで共にいる」気持ちがないと感じると、それを裏切りだと感じます。このサブタイプの欲望は、単なる欲求から「所有したい」という気持ちに変わります。極度に神経症的な状態になると、SX8は非常に強い所有欲を持ち、人間関係の中でひどい混乱を引き起こすことがあります。それに加えて、SX8は限界をはっきり理解できないことが多いです。無意識のうちに、エニアグラムにおける「侵略者」のような存在となりがちです。しかし、SX8自身の領域に誰かが侵入することは絶対に許しません。
カルメン・デュラン、アントニオ・カタラン
Durán, C. and Catalán, A. (2009). "Los engaños del carácter y sus antídotos"
SX8の場合、タイプ8の「欲望」は、パートナーを完全に自分のものにし、相手から絶対的な献身を求める形で表れます。女性のSX8の場合、所有欲よりもむしろパートナーへの強い献身が目立つことがありますが、この献身は実際には貪欲なもので、所有欲とほとんど区別がつきません。なぜなら、SX8は自分が与えるものと同じものを相手に求めるからです。この欲望に対しては恥じらいがなく、SX8は本能に従って、圧倒的な情熱で自分の望むものを追い求めます。相手を自分のものにすることで、自分の力や支配力を感じ、相手が自分に従うことで快感を得ます。支配されることへの恐怖が、彼らを支配的な存在へと駆り立てます。そのため、愛は所有欲とが、しばしば混同されることがあります。彼らの欲望は、非常に価値のある誰かを見つけ、その人を自分の一部として取り込み、自己の価値を確認することにあります。相手を取り込み、自己と融合することを望みつつも、SX8自身は決して自分自身のアイデンティティを失うことはありません。この所有欲は融合を確立させ、彼らの献身的な欲求を満たすのです。
訳注
- ^ 「アポロン的」と「ディオニュソス的」は、19世紀の哲学者フリードリヒ・ニーチェが「悲劇の誕生」(1872年)で対比した概念で、ギリシャ悲劇の源泉として論じらたもの。アポロン的は理性、秩序、美、抑制を重視し、光や知識を象徴する。これに対し、ディオニュソス的は感情、狂騒、解放、影を讃え、自然や共同体との一体感を重視する。アポロン的アプローチは分析的で計画的、視覚芸術に見られ、ディオニュソス的アプローチは音楽や詩のリズムや即興性に強調され、感情の爆発や共同体意識と関連する。この二つは秩序vs混沌、理性vs感性、個々vs共同体の対比を形成し、真の芸術的体験はこれらのバランスから生まれるとニーチェは考えた。(これらの用語自体はニーチェ以前から存在するが、ニーチェの「悲劇の誕生」によって広がった)
- ^ 展開の補足:ナスターシャの誕生日を祝うため、彼女を取り巻く人々がガーニャの家に集まる。この場面では、主要人物たちの感情と意図が一気に噴出し、物語の重要な転機となる。ガーニャは、ナスターシャとの結婚を通じて金銭的利益を得ようと目論むが、内心では彼女を軽蔑している。一方で、公爵ムイシュキンはナスターシャの孤独と苦悩を感じ取り、彼女を救いたい一心で真摯に求婚する。その直後、ロゴージンが10万ルーブルを手に押し掛け、ナスターシャに自分と共に逃げるよう強引に迫る。彼の執着は狂気じみており、場の緊張が一気に高まる。ナスターシャはムイシュキンの純粋な善良さに一瞬心を動かされるが、彼女は自分を「堕落した女」と認識していた。幼い頃から資産家の情婦として過ごし、社会からの悪評に晒されていたが、実は内面では誇り高く、自己を大切にしようとしていた。しかし、その誇りがむしろ彼女の心を抑圧し、彼女は自分には幸せを享受する資格がないと感じていた。最終的に、ナスターシャはロゴージンの提案を受け入れ、彼と共にその場を去る。
- ^ 展開補足:実際、物語のラストで、ロゴージンはナスターシャを殺害する。